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居抜き物件で開業するときの注意点造作譲渡・リース品・営業許可・原状回復

公開日:2026.10.30

「前もカフェだったお店だから、カウンターも流しも冷蔵庫もそのまま使える」。たとえば、36歳のデザイナーが、海の近くの街で仕事場を兼ねた小さなカフェを開こうと探していて、そんな物件に出会ったとします。内装や設備が残ったまま借りられる物件は居抜き(いぬき)と呼ばれ、工事が少なくてすむ分、開店までの費用と時間を抑えやすいのが魅力です。

ただ、残っている物が「誰のものか」「いくらで受け取るのか」「出ていくときにどうするのか」を決めないまま契約すると、あとで思わぬ出費になることがあり、前の店の営業許可も内装と一緒には付いてきません。このコラムでは、居抜き物件でお店を始める前に確かめたいことを、契約の前から退去のときまで順番にまとめました。例は東京都・千葉県・神奈川県・埼玉県の公式資料から取っています。

この記事のポイント

  • 前の店から内装や設備を買い取る「造作譲渡」は、受け取る物の一覧・金額・動作の確認・壊れていたときの扱いを書面にしておけば安心です。
  • 残っている機械には、リース会社の持ち物(リース品)が混ざっていることがあります。一つずつ持ち主を確かめましょう。
  • 内装や設備だけを受け取る居抜きでは、保健所の営業許可は自分の名前で新しく取り、消防署への届出もします。退去のときにどこまで元に戻すかも、契約の前に決めておきましょう。

この記事は、2026年10月時点の法令や自治体の公開情報をもとに、一般的な内容をまとめたものです。実際の手続きや可否の判断は、物件のある市区町村・保健所・警察署、または行政書士などの専門家に必ずご確認ください。この記事の内容によって生じた損害について、当社は責任を負いかねます。

1. 居抜き物件とスケルトン物件の違い

お店の物件には、大きく分けて2つの状態があります。

  • スケルトン:床・壁・天井の仕上げや設備がなく、建物の骨組みに近い状態。内装を一から自由につくれますが、工事の費用と期間がかかります。
  • 居抜き:前の店の内装、厨房設備、空調、家具などが残った状態。そのまま使える物が多いほど、工事を減らせます。

居抜きは費用を抑えやすい一方で、前の店の間取りや設備に合わせることになります。カフェの居抜きでカフェを開くなら使える物が多いですが、業種が変わると、使わない物の撤去に費用がかかることもあります。

日本政策金融公庫は、飲食業を始める人向けの「創業の手引+(プラス)」で、居抜き物件を探す人に、譲渡価格の内訳とその価格が妥当か、そして前の店がどんな理由で閉めたかを確かめるようすすめています。閉店の理由が立地の問題だった場合は注意が必要だ、としています。

「物だけ」受け取るのか、「お店ごと」引き継ぐのか

居抜きには、次の2つの形があります。どちらなのかで、契約も手続きも変わります。

  • 内装や設備(物)だけを受け取る:前の店は営業をやめ、自分は新しいお店を開く形です。このコラムは主にこちらを説明します。
  • お店の営業そのものを引き継ぐ:店名、仕入れ先、従業員、常連さんとの関係なども含めて、前の店の営業をまるごと譲り受ける形です。

お店ごと引き継ぐ形は「事業の承継」にあたり、確かめることがさらに増えます。くわしくは店や宿を引き継いで始めるを読んでみてください。

チェック

  • 物件がスケルトンか居抜きか、居抜きならどこまで残るのかを確かめた
  • 前の店が閉めた理由を、不動産会社や前の店に聞いた
  • 「物だけ」受け取るのか、「お店ごと」引き継ぐのかを決めた

2. 造作譲渡の契約:前の店から「何を」「いくらで」受け取るか

居抜きで残っている内装や設備を造作(ぞうさく)といいます。カウンター、棚、照明、厨房の流しや作業台、冷蔵庫、空調、看板などです。これを前の店から買い取ることを造作譲渡(ぞうさくじょうと)といい、前の店と新しく入る人の間で売り買いの契約を結びます。

関わる人は3人

居抜きの契約には、前の店(前の借主)、自分、建物の持ち主である大家さんの3人が関わります。お店を借りる契約と、造作を買う契約は別のものです。

  • 借りる契約:前の店が解約して自分が大家さんと新しく契約する形と、前の店の「借りる権利(賃借権)」を譲り受ける形があります。借りる権利を人に譲るには、大家さんの承諾が必要です(民法612条)。
  • 造作を買う契約:前の店と自分の間で結びます。ただ、造作を残すことや退去のときの扱いは大家さんとの約束にも関わるので、大家さんにも了解をもらっておきましょう。

大家さんとの借りる契約が結べないと、造作だけ買っても使えません。造作譲渡の契約には「借りる契約が結べなかったときは、この契約もなかったことにする」と書いておくと安心です。

契約書に書いておきたいこと

  • 受け取る物の一覧:品名、数、メーカーや型番、製造年。写真もつけておくと、あとで食い違いが起きにくくなります。
  • 金額と支払いの時期:物ごとの内訳があると、高すぎないかを比べられます。
  • 引き渡しの日:借りる契約が始まる日や、内装工事の予定と合わせます。
  • 動作の確認:冷蔵庫が冷えるか、空調や換気扇が動くか、水もれがないかを、引き渡しの前に一緒に確かめます。
  • 壊れていたときの扱い:あとで不具合が見つかったら、誰がどこまで直すのかを決めます。
  • 残置物の片づけ:買い取らない物を、誰がいつ片づけるか(3章)。

壊れていたときの決まり

受け取った物が約束と違う(壊れている、数が足りないなど)とき、買った人は、直すことや代わりの物を求められます(民法562条)。それでも直してもらえなければ、代金を減らすよう求められます(民法563条)。こうした責任を契約不適合責任(けいやくふてきごうせきにん)といい、品物の状態が約束と違うときは、気づいてから1年以内に相手に知らせる必要があります(民法566条)。

ただし、お店どうしの売り買い(商人間の売買)にあたる場合は、商法の決まりが先に使われます。受け取ったら遅れずに検査し、不具合が見つかったらすぐに知らせなければならず、すぐには分からない不具合も6か月以内に見つけて知らせる必要があります(商法526条)。どちらにあたるかにかかわらず、引き渡しの日にすぐ動作を確かめ、不具合は書面ですぐ知らせると覚えておけば大丈夫です。

「今の状態のまま引き渡し、あとの故障には責任を負わない」という約束にすることもできます。その場合でも、前の店が知っていながら言わなかった不具合は、責任を免れません(民法572条)。古い設備が多いときは、修理や買い替えの費用を見込んでおくと安心です。

敷金・保証金は引き継がれないのが原則

前の店の借りる権利を、大家さんの承諾を得て譲り受けた場合、大家さんは前の店に敷金を返すのが民法の原則です(民法622条の2)。ここでいう敷金には、「保証金」など名前が違っても、家賃などの支払いを担保するために預けるお金が含まれます。前の店が預けていた敷金や保証金は自分には引き継がれず、自分の分を新しく預けるのが基本なので、別の約束をするなら3人で書面にしておきましょう。

一覧の内訳は、税金の計算にも役立つ

国税庁によると、お店の設備や器具・備品は「減価償却資産」で、買ったときに全額を経費にするのではなく、使える期間に分けて経費にしていきます。ただし、1つの取得価額が10万円未満の物は、使い始めた年に全額を経費にします。10万円以上20万円未満の物は3年で均等に経費にする方法を選べ、青色申告をしていて一定の条件に合う人は、2026年4月以降に取得した40万円未満の物を、年300万円までその年の経費にできる特例もあります(2026年10月時点)。

造作をまとめて「一式○万円」で買うと、こうした区分が分かりにくくなります。物ごとの金額を一覧に書いてもらい、くわしい扱いは税務署や税理士に確かめましょう。

チェック

  • 受け取る物の一覧(品名・型番・製造年・写真)をつくった
  • 物ごとの金額の内訳をもらい、新しく買う場合とくらべた
  • 引き渡しの日に、設備の動作を一緒に確かめる約束をした
  • 壊れていたときの扱いと、借りる契約が結べなかったときの扱いを契約書に書いた
  • 敷金・保証金をどうするかを、大家さんと前の店と確かめた

3. リース品・残置物・業務用冷蔵庫と排水の確認

リース品は、リース会社のもの

厨房機器、製氷機、コーヒーマシン、レジ、業務用の空調などは、前の店がリースで使っていることがあります。リース品の持ち主はリース会社で、前の店は使っているだけです。前の店が持ち主でない物は、造作として自由に売ることはできません。

造作の一覧をつくるときは、一つずつ「前の店の持ち物か、リースか」を確かめましょう。

  • 使い続けたい場合:引き継げるか、条件はどうなるかを、前の店を通してリース会社に確かめます。
  • 使わない場合:前の店がリース会社に返すのか、どう精算するのかを、前の店とリース会社の間で済ませてもらいます。

業務用の冷蔵庫・エアコンは、点検と捨て方に決まりがある

業務用の冷蔵庫・冷凍庫やエアコンで、冷やすためのガス(冷媒)にフロン類を使っているものは、フロン排出抑制法の第一種特定製品にあたります。環境省の説明では、守ることは次のとおりです。

  • 管理する人:原則として機器の持ち主が「管理者」です。造作譲渡で買い取れば、自分が管理者になります。リース契約などで、点検や修理の責任を使う人が負うと書面で決めている場合は、その人が管理者です。
  • 簡易点検:すべての機器で、3か月に1回以上の簡易点検(目で見て、もれや異常がないかを確かめる)が必要です。
  • 定期点検:定格出力7.5kW以上の機器は、十分な知識のある人による定期点検も必要です(冷蔵・冷凍機器は1年に1回以上、エアコンは50kW以上が1年に1回以上、7.5kW以上50kW未満が3年に1回以上)。
  • 記録の引き継ぎ:機器を人に売るときは、点検整備の記録簿(またはその写し)を一緒に渡すことになっています。造作譲渡で受け取るときは、記録簿ももらいましょう。
  • 捨てるとき:捨てる前に、都道府県の登録を受けた回収業者(第一種フロン類充塡回収業者)にフロン類を回収してもらいます。受け取る「引取証明書」は3年間保存します。

使わない業務用の冷蔵庫やエアコンが残っているなら、誰がフロンの回収と処分をするのかを、前の店と決めておきましょう。

残置物は、誰が片づけるかを書面で決める

造作として買い取らない物で、前の店が置いていった物を残置物(ざんちぶつ)といいます。古い食器や調理道具、壊れた家具、在庫の箱などです。

廃棄物処理法では、事業者は、事業で出た廃棄物を自らの責任で適正に処理しなければならないと決めています(廃棄物処理法3条)。お店の物は家庭ごみと同じようには出せないので、前の店が片づけるのか、自分が受け取って処分するのか、費用は誰が持つのかを、引き渡しの前に書面で決めておきましょう。

排水の「グリース阻集器」も見ておく

飲食店では、流しの排水から油や生ごみを取り除くグリース阻集器(そしゅうき、油を分けてためる装置)が使われます。東京都下水道局は、事業の内容や規模に応じてグリース阻集器を設置し、日々清掃するよう求めています。清掃がされていないと、悪臭や害虫の原因になるとしています。

居抜きでは、阻集器があるか、どこにあるか、清掃されているかを見ておくと、開店してからの困りごとを減らせます。東京都では設置の基準を下水道条例施行規程などで決めているので、ほかの地域では、お店のある区市町村の下水道の担当課に確かめましょう。

チェック

  • 残っている機械が、前の店の持ち物かリースかを一つずつ確かめた
  • 業務用の冷蔵庫・エアコンの点検整備の記録簿を受け取る約束をした
  • 使わない機器と残置物を、誰がいつ片づけるかを書面で決めた
  • グリース阻集器の場所と、清掃の状態を見た

4. 居抜きでも営業許可は新しく取る?保健所と消防の手続き

内装や設備を受け取っても、前の店の許可や届出は、基本的に一緒には付いてきません。お店の許可は「誰が」「どこで」営むかに結びついているからです。

保健所の飲食店営業許可は、自分の名前で新しく取る

飲食店を営むには、都道府県知事など(保健所)の営業許可が必要です(食品衛生法55条)。内装や設備だけを受け取る居抜きでは、営む人が変わるので、自分の名前で新しく許可を取ります。東京都の案内では、営業する人が変わったときは、前の店がその日から10日以内に廃業届を出し、新しい人は新規の申請をします。

東京都と千葉県の案内では、申請の流れはおおむね次のとおりです。

  1. 工事を始める前に、図面と今の様子がわかる写真を持って保健所に相談する(千葉県は「必ず着工前に」と案内しています)
  2. 申請書、施設の図面(東京都は2通)、食品衛生責任者の資格を証明するもの、手数料を出す(東京都は工事が終わる予定の10日くらい前まで)
  3. 保健所の施設の検査を受ける
  4. 許可書を受け取って、営業を始める

申請は保健所の窓口のほか、国の「食品衛生申請等システム」でオンラインでもできます。東京都では、申請や施設の検査のときに衛生管理計画(HACCPに沿った衛生管理の計画)を確かめるので、用意しておきましょう。

手数料と、食品衛生責任者

手数料は都県や区市で違います。2026年10月時点で公式ページに載っている飲食店営業(新規)の額は、たとえば次のとおりです。

  • 東京都の保健所(多摩地域など):18,000円(2026年4月1日から)。23区・八王子市・町田市は、それぞれの区市の保健所で確かめます。
  • 千葉県の保健所:16,000円。千葉市・船橋市・柏市は、それぞれの市の保健所が担当です。

お店には食品衛生責任者(お店の衛生を管理する人)を置きます。東京都では、計6時間ほどの養成講習会を受けるとなれます。調理師・栄養士などの資格がある人は、講習を受けなくてもなれます。

お店ごと譲り受けるなら「地位の承継」という道もある

2023年12月13日から、許可を受けた人が営業を譲り渡したとき、譲り受けた人が新しく許可を取らずに、届出で許可を受けた人の立場を受け継げるようになりました(地位の承継、食品衛生法56条)。

  • 東京都の案内では、対象は営業の全部を譲る場合に限られます。内装や設備(物)だけを買い取り、前の店は営業をやめる居抜きは、営業を譲り受けるわけではないので、新しく許可を取るのが基本です。
  • 譲り受けた人は、譲渡契約書の写しなどを添えて、遅れずに保健所へ届け出ます。届出のあと、保健所がお店の衛生管理の様子を確かめます。
  • 衛生管理の責任も、そのまま引き継ぎます。譲る側は、なるべく前もって保健所に相談するよう、厚生労働省が案内しています。

お店ごと引き継ぐ話になりそうなら、契約の前に、譲る側と一緒に保健所へ相談しましょう。

前の店が使えた設備でも、今の基準で検査される

2021年6月1日から食品衛生法の新しい許可の仕組みが始まり、施設の基準も変わりました。それより前から営業していたお店は、許可の有効期間が終わるまでは、そのまま営業を続けられる経過措置があります。一方、2021年6月1日以降に新しく営業を始める人は対象外で、今の基準に合った施設で許可を取ります。

つまり、前の店が古い許可のまま営業していた設備でも、自分は今の基準で検査を受けます。東京都の資料では、たとえば次の点が示されています。

  • 手洗い設備は、調理場とトイレの両方に必要
  • 調理場の手洗いの水栓は、洗ったあとの手が再び汚れない形(レバー式、センサー式、足踏み式など)
  • 井戸水や、ビルの小さな貯水槽の水を使うなら、1年以内の水質検査の成績書が必要

直す必要がある所が見つかれば、造作の価格を話し合う材料にもなります。契約の前に、図面と写真を持って保健所に相談しておきましょう。

消防署への届出も、自分の名前で

建物の一部を新しくお店として使い始めるときは、消防署への防火対象物使用開始届出書が必要です。東京消防庁、横浜市、さいたま市、千葉市とも、使い始める日の7日前までに出すことになっています。届け出るのは、工事業者ではなく、実際にお店を営む人です。

  • 防火対象物工事等計画届出書:間取りや天井の高さを変える改装をするなら、工事を始める7日前までに(東京消防庁)
  • 火を使用する設備等の設置届出書:厨房の火を使う設備の入力の合計が120kW以上などの場合、設置する7日前までに(東京消防庁)
  • 消防用設備等設置届出書:火災報知設備などを付けたり直したりしたら、4日以内に(東京消防庁)

使い方が同じで、使う人だけが変わる居抜きの扱いは、消防本部で少し違います。東京消防庁は「テナント入れ替え後」も使用開始届が必要と案内し、千葉市は、用途が変わらず使う人だけが変わり、防火管理や消防用設備に影響がない場合は省略できる、としています。まずお店の場所の消防署に電話で相談の予約をして、必要な届出と検査の日を確かめましょう。

スナック・バーにする、業種を変えるなら

スナックやバーのように、警察への許可や届出が必要なお店も、許可や届出はお店を営む人ごとのものです。たとえば33歳で、前もスナックだった居抜き物件でお店を開く場合も、前の店の許可は使えず、保健所の営業許可と、警察への許可または届出を自分の名前で取り直します。くわしくはスナックとバーの手続きの違いに、物販店をカフェにするなど使い方が大きく変わるときの建物の決まりは古民家カフェを開業するにはにまとめています。

チェック

  • 前の店の営業許可の業種と、名義を確かめた
  • 契約の前に、図面と写真を持って保健所に相談した
  • 今の基準に合わせて直す所(手洗い・水栓など)と、その費用を見込んだ
  • 食品衛生責任者を誰にするか決めた
  • 消防署に、使い始める前の届出と検査の日程を確かめた

5. 賃貸借契約の確認と、退去時の原状回復

借りる期間と、造作に払うお金のバランス

お店を借りる契約には、ふつうの借家契約と定期借家契約(期間が来たら更新せずに終わる契約)があります。定期借家契約は書面(電子の契約も可)で結び、大家さんは前もって「更新がなく、期間が来たら終わる」ことを書面で説明しなければなりません(借地借家法38条)。期間が1年以上なら、大家さんは終わる1年前から6か月前までにそのことを知らせる必要があり、知らせがないと、終わることを借りる人に主張できません。

定期借家で期間が短いと、造作に払ったお金を回収しきれないうちに、出ていくことになるかもしれません。造作の価格と、お店を続けられる年数を並べて考えましょう。

たとえば:造作の代金を「1か月あたり」で見る

36歳のデザイナーがカフェの居抜き物件で、造作譲渡の提示額が150万円、定期借家の期間が4年(48か月)、退去のときはスケルトンに戻す約束だったとします(数字は説明のための仮のものです)。

  1. 一覧をつくると、コーヒーマシンはリース品だと分かったので、提示額の内訳から外してもらう
  2. 残った造作の代金150万円を48か月で割ると、1か月あたり約3.1万円
  3. 退去のときの工事の見積もりを取り、仮に100万円なら、合わせて250万円÷48か月で、1か月あたり約5.2万円
  4. この額を家賃に上乗せして考え、新しく内装をつくる場合の見積もりともくらべる

このように並べると、「安いと思った居抜きが、期間と退去の費用を入れるとどうか」が見えてきます。

造作買取請求権は、外されていることもある

借地借家法には、大家さんの同意を得て付けた造作(大家さんから買った造作も含む)を、契約が終わるときに大家さんに時価で買い取ってもらうよう求められる造作買取請求権(ぞうさくかいとりせいきゅうけん)があります(借地借家法33条)。ただし、借りる人に不利な約束を無効にする決まり(借地借家法37条)の対象に33条は入っていないため、契約書の約束で外せます。契約書にどう書いてあるかを確かめましょう。

原状回復:どこまで元に戻すかは契約しだい

借りた人は、借りたあとにできた傷みを、契約が終わるときに元に戻す原状回復の義務があります。ふつうに使った傷みや古くなった分は除きます(民法621条)。

よく知られている国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、賃貸住宅を対象にしたものです。お店の契約では、契約書でどう決めたかがより大切になります。

居抜きで特に気をつけたいのは、入るときは居抜きでも、出るときはスケルトンに戻す約束になっている場合で、前の店がつくった内装も自分が撤去することになります。入るときに受け取った物と、出るときに戻す範囲が合っているかを、契約の前に確かめておきましょう。退去のときの考え方は、物件を探す人向けのコラム退去のとき、どこまで元に戻す?(ハコツギ)もくわしいです。

出口の選び方も、入口で決めておく

自分が出ていくときに、次の人へ居抜きで譲れるかどうかも、大家さんとの約束しだいです。「大家さんが了解すれば、次の借主へ造作を譲ってもよい」と契約書に書いておけると、出るときの選び方が広がります。

チェック

  • ふつうの借家契約か、定期借家契約かを確かめた
  • 造作の代金と退去の費用を、続けられる月数で割ってみた
  • 造作買取請求権が、契約書で外されていないかを確かめた
  • 退去のときに戻す範囲(スケルトンかどうか)と、その費用を見込んだ
  • 出るときに、次の人へ造作を譲れるかを大家さんと話した

6. 確かめる順番と、相談先

居抜き物件を見つけたら、次の順番で確かめていきましょう。

  • ① 物件の状態(どこまで残るか)と、前の店が閉めた理由を聞く
  • ② 残っている物の一覧をつくり、持ち物かリースか、使うか使わないかを分ける
  • ③ 図面と写真を持って保健所と消防署に相談し、直す所と届出の日程を確かめる
  • ④ 造作の内訳を確かめ、修理・今の基準に合わせる工事・退去の費用を足して、1か月あたりでも計算する
  • ⑤ 大家さんと、借りる契約の形・期間・敷金・退去時の戻し方・次の人への譲り方を決める
  • ⑥ 前の店と、造作譲渡の契約(一覧・金額・引き渡し日・動作確認・不具合の扱い・残置物)を結ぶ
  • ⑦ 引き渡しの日に設備の動作を確かめ、記録簿を受け取り、工事・許可・消防の届出を済ませて開店する

主な相談先

  • 飲食店営業許可、食品衛生責任者、営業の承継:お店の場所を受け持つ保健所(東京都・千葉県とも、区市によって担当が違います)
  • 使用開始の届出、厨房の火、消防用設備:お店の場所を受け持つ消防署
  • グリース阻集器などの排水:お店のある自治体の下水道の担当(東京都では東京都下水道局が案内しています)
  • 業務用の冷蔵庫・エアコンのフロン:都道府県のフロン排出抑制法の担当窓口
  • 借りる契約・造作譲渡の契約:宅地建物取引士のいる不動産会社、弁護士
  • 買い取った設備の税金の扱い:税務署、税理士

居抜きは、前の店が積み重ねてきたものを受け取って、早く、小さく始められる方法です。「何を受け取り、何を自分で用意し、出るときにどうするか」を一つずつ書面にしていけば、安心してお店づくりに進めます。

最後に:必ず、自治体の担当課に確かめてください

許可や手続き、支援の制度は、同じ内容でも自治体によって判断や条件が違うことがあります。物件や計画が決まったら、その市区町村の担当課(建築指導課・都市計画課・保健所・消防署・警察署、移住や創業の支援の窓口など)に、住所や図面を持って直接確かめましょう。

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※この記事は、2026年10月時点の法令や自治体の公開情報をもとに、一般的な内容をまとめたものです。実際の手続きや可否の判断は、物件のある市区町村・保健所・警察署、または行政書士などの専門家に必ずご確認ください。この記事の内容によって生じた損害について、当社は責任を負いかねます。

出典・参考(28件)

居抜きの確かめ方(1章)

造作譲渡・お金(2章)

  • 民法 第562条(追完請求)、第563条(代金減額請求)、第566条(気づいてから1年以内の通知)、第572条(責任を負わない特約でも、知りながら告げなかった事実は免れない)、第612条(賃借権の譲渡は賃貸人の承諾が必要)、第622条の2(敷金の定義は名目を問わない、賃借権を適法に譲り渡したときは賃借人に返還)/e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
  • 商法 第526条(商人間の売買:受領後遅滞なく検査、直ちに通知、直ちに発見できない不適合は6か月以内)/e-Gov https://laws.e-gov.go.jp/law/132AC0000000048
  • 国税庁 タックスアンサー No.2100 減価償却のあらまし(令和8年4月1日現在法令等:10万円未満は全額、10万円以上20万円未満は3年で一括償却、青色申告者の特例は令和8年4月1日以後の取得は40万円未満・合計300万円まで)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm

リース品・フロン・残置物・排水(3章)

  • 環境省「令和5年度フロン排出抑制法に関する説明会 フロン排出抑制法の概要~第一種特定製品の管理者(機器ユーザー等)~」2023年11月(リース会社が所有者の例、管理者は原則所有者・書面で保守責任を負う使用者、簡易点検3か月に1回以上、定期点検の頻度、譲渡時は点検整備記録簿を引き渡す、廃棄時は登録業者へ引渡し・引取証明書3年保存、問い合わせは都道府県の担当窓口)https://www.env.go.jp/earth/furon/files/r05_kanrisya.pdf
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第3条(事業者の責務)/e-Gov https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000137
  • 東京都下水道局 飲食店のみなさまへのお願い(事業の内容や規模に応じたグリース阻集器の設置、日々の清掃、清掃しないと悪臭や害虫の原因、設置基準は東京都下水道条例施行規程第3条の3・阻集器に関する取扱要綱)https://www.gesui.metro.tokyo.lg.jp/living/sonota/oil/food_onegai

保健所(4章)

消防(4章)

契約・原状回復(5章)