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開業資金はいくら必要?日本政策金融公庫の創業融資と補助金、創業計画書の書き方

公開日:2026.10.30

「小さなバーを開きたい」「週末だけのキャンプ場から始めたい」。やりたいことが決まると、次に気になるのが「いくら用意すればいいの?」というお金のことです。貯金で足りるのか、借りるならどこからか、考え始めると手が止まる方も多いと思います。

でも、開業のお金は「数える」「集める」「計画書で確かめる」の順に進めれば、見通しが立ちます。日本政策金融公庫(以下「公庫」)の創業融資、区市町村の創業塾、都県の融資、補助金など、始める人を後押しする仕組みもそろっています。このコラムでは、2026年10月時点の公式情報をもとに、その使い方と、事業計画書(どんな事業で、どう利益を出すかをまとめた書類)の作り方を紹介します。

この記事のポイント

  • 開業資金は「設備資金」と「運転資金」に分けて数えます。公庫の2025年度の調査では、開業費用の中央値は600万円で、4割以上の人が500万円未満でした。
  • 創業のための融資は、公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」と、開業する都県の「制度融資」が二本柱です。公庫は、創業期なら原則として担保・保証人なしで申し込めます。
  • 開業する区市町村の創業塾など(特定創業支援等事業)を受けて証明書をもらうと、融資の利率や、会社をつくるときの税金が下がります。受講には1か月以上かかるので、早めに予定を組みましょう。

この記事は、2026年10月時点の法令や自治体の公開情報をもとに、一般的な内容をまとめたものです。実際の手続きや可否の判断は、物件のある市区町村・保健所・警察署、または行政書士などの専門家に必ずご確認ください。この記事の内容によって生じた損害について、当社は責任を負いかねます。

1. 開業資金はいくら必要?設備資金と運転資金に分けて数える

開業のお金は、大きく2つに分けて考えます。公庫の創業計画書(融資の申込みで出す計画書)も、この2つに分かれています。

  • 設備資金:内装工事、厨房機器、テーブルやいす、看板、車両など、始めるときに一度に買うもの。物件を借りるときの保証金も、公庫の記入例ではここに入っています。
  • 運転資金:仕入れ、家賃、水道光熱費、広告費など、毎月出ていくお金。売上が安定するまでの数か月分を見ておきます。

公庫の総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」(公庫が融資した開業1年以内の企業が対象)では、開業費用の平均は975万円、中央値は600万円でした(中央値は、少ない順に並べて真ん中の人の金額)。「250万円未満」が20.1%、「250万〜500万円未満」が21.7%で、500万円未満の人が4割以上です。

設備資金は「見積もり」と「中古・リース」でおさえる

公庫の「創業の手引」(2026年5月版)は、設備資金について次の点を確かめるよう勧めています。

  • 買う予定の設備は、複数の会社から見積もりをとり、金額を比べたか
  • 中古品を使って、最初のお金をおさえられないか
  • 買うだけでなく、リースやレンタルも考えたか
  • 什器・備品、看板、レジなど、見落としている設備はないか

前のお店の内装や設備を引き継ぐ「居抜き」も、設備資金をおさえる方法の一つです。注意点は居抜き物件で開業するときの注意点にまとめています。

運転資金は「黒字になるまで」を見ておく

同じ手引には、黒字になるまでにかかった期間は平均6.4か月という公庫の調査結果がのっています。最初の半年ほどは売上が少なくても家賃や仕入れが払えるよう、運転資金を多めに見ておくと安心です。

開店前の家賃も忘れずに入れましょう。契約から開業までの段取りは、姉妹サイトの契約してから開業まで、何から手をつける?(ハコツギ)が参考になります。

自己資金と借入のバランス

同じ調査では、開業時に集めたお金は平均1,219万円で、「金融機関などからの借入」が平均827万円(67.9%)、「自己資金」が平均279万円(22.9%)でした。公庫の手引は、自己資金の割合が高いほど借入の割合が低くなり、ゆとりのある資金繰りができる、としています。会社員のうちから、少しずつ積み立てておきましょう。

親やきょうだい、知人から借りる場合は、創業計画書にも「内訳・返済方法」を書く欄があります。あとで気まずくならないよう、金額と返し方を紙に書いておきましょう。

チェック

  • 必要なお金を、設備資金と運転資金に分けて書き出した
  • 大きな設備は、2社以上から見積もりをとった
  • 黒字になるまでの数か月分の運転資金と、開店前の家賃を入れた
  • 自己資金がいくら用意できるかを確かめた

2. 日本政策金融公庫の創業融資:新規開業・スタートアップ支援資金

制度のあらまし(2026年10月時点)

  • 使える人:新たに事業を始める方、または始めておおむね7年以内の方。適正な事業計画とやりとげる力があることを、創業計画書などで確かめられます。
  • 使いみち:設備資金と運転資金
  • 融資限度額:7,200万円
  • 返済期間:設備資金は20年以内、運転資金は10年以内。どちらも、元金を返さず利息だけ払う「据置期間」を5年以内でつけられます。
  • 担保・保証人:新たに事業を始める方や、税務申告を2期終えていない方は、原則として担保も保証人もなしで使えます。

利率は「基準利率」と、それより低い「特別利率」

利率は、使いみち、返済期間、担保の有無などで変わり、金融情勢でも動きます。公庫の金利情報(2026年10月1日現在)では、特別利率Aは基準利率より0.40%、特別利率Bは0.65%低く設定されています。創業期の方には、各制度の利率から原則0.65%(雇う人を増やす場合は0.9%)下げる「創業支援貸付利率特例制度」もあります。

実際に何%になるかは申込みの内容で決まるので、最新の金利情報を見て、支店で確かめましょう。

特別利率になる人(主なもの)

  • 女性、35歳未満、55歳以上の方は特別利率A
  • 区市町村の特定創業支援等事業を受け、有効な証明書をもらった方は特別利率A。女性、35歳未満、55歳以上のいずれかにも当たれば特別利率B
  • 東京圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)の「条件不利地域」以外に住むか勤める方が、東京圏の外か、東京圏の条件不利地域で事業を始める場合は特別利率A(過疎地域なら特別利率B)

ただし、土地にかかる資金は、原則として特別利率の対象外です。

たとえば、31歳でキャンプ場、33歳でバーを始める方は35歳未満なので特別利率A、証明書もとれば特別利率Bです。54歳や36歳の方は年齢の条件に当たりませんが、証明書があれば特別利率Aになります。東京から千葉や神奈川の海・山の近くへ移って始めるなら、移る先が条件不利地域に当たるかを支店で確かめましょう。

申込みの流れと、用意する書類

申込みは、インターネットか支店の窓口です。流れは「予約相談→申込み→面談→お店の予定地の訪問→融資の決定→契約→送金」です。インターネットで申し込むときに用意する主な書類は、次のとおりです。

  • 創業計画書(5章)
  • 設備資金を申し込むなら、見積書
  • 運転免許証(両面)、マイナンバーカード(表面のみ)、パスポートのいずれか
  • 許認可証(飲食店など、許可・届出がいる事業を営んでいる場合)
  • 会社の場合は、履歴事項全部証明書または登記簿謄本

飲食店・旅館などは「推せん書」に注意

飲食店、喫茶店、理容・美容、旅館業などの「生活衛生関係」の事業を始める方は、生活衛生同業組合に入っていなければ、設備資金の申込金額が500万円を超えると都道府県知事の「推せん書」が必要です。申請先は都道府県の生活衛生の担当部署(生活衛生営業指導センターの場合もあります)なので、早めに確かめましょう。

相談のしかた

  • 全国152の支店にある「創業サポートデスク」で、来店かオンライン(Microsoft Teams)で相談できます。予約制です。
  • 電話は「事業資金相談ダイヤル」0120-154-505。創業の相談は平日9時〜19時です。
  • 「公庫と提携している」と装う業者の勧誘に注意し、申込みは公庫の窓口か公式サイトから直接行いましょう。

チェック

  • 自分が特別利率の対象(年齢、証明書、移住など)になるかを確かめた
  • 返済期間と据置期間を、どのくらいにしたいか考えた
  • 飲食店や宿なら、推せん書がいるかを確かめた
  • 支店の創業サポートデスクに予約を入れた

3. 特定創業支援等事業(創業塾)の証明書で受けられる優遇

開業前にぜひ調べてほしいのが特定創業支援等事業です。産業競争力強化法にもとづいて国の認定を受けた区市町村が、商工会議所などと行う創業の支援で、経営・財務・人材育成・販路開拓(お客さんを増やす方法)の4つを学びます。原則として4回以上・1か月以上続く創業塾や個別相談の形で行われ、受け終わると区市町村から証明書がもらえます。

たとえば東京都江東区の創業塾

「令和8年度第8回江東区創業塾」は、証明書がほしい人向けの講座です(2026年10月時点の案内)。

  • 日程:2027年2月20日〜3月27日の土曜日、全5日間。全部に出ることが条件です
  • 費用は無料、定員30人(先着順)。持ち物は筆記用具や計算機など
  • 申し込めるのは、区内で6か月以内に創業する具体的な計画がある方か、区内に事業所がある創業5年未満の方

日程や条件は区市町村ごとに違い、その区市町村で創業する人に限るところもあります。開業する予定の役所(商工・産業の担当課)に問い合わせましょう。認定を受けている自治体の一覧は、中小企業庁のページで見られます。

証明書でできること

中小企業庁の資料などによると、主な優遇は次のとおりです。

  • 会社をつくるときの登録免許税が半分に:株式会社・合同会社とも、資本金の0.7%が0.35%に。最低の金額は、株式会社が15万円から7.5万円に、合同会社が6万円から3万円に下がります。
  • 信用保証協会の「創業関連保証」を、事業を始める6か月前から使える(ふつうは2か月前から)
  • 公庫の特別利率(2章)、都県の制度融資の優遇(4章)
  • 小規模事業者持続化補助金〈創業型〉に申し込める(4章)

たとえば資本金300万円で株式会社をつくると、0.7%では2.1万円ですが、最低の金額の15万円がかかります。証明書があれば、7.5万円で済みます。個人事業として始めるなら会社の登記がないのでこの税は関係ありませんが、融資や補助金の優遇は使えます。

登録免許税の軽減は「会社をつくる区市町村」の証明書で

中小企業庁のQ&Aや、横浜市・君津市の案内による注意点です。

  • 登録免許税の軽減は、支援を受けた区市町村と同じ区市町村で創業する場合に限られます(いくつかの区市町村が共同で計画をつくっている場合は、その中ならどこでも対象)。
  • 創業関連保証、公庫の利率、持続化補助金〈創業型〉は、ほかの市町村で創業する場合でも使えます。
  • 軽減を受けられるのは、会社をつくる「発起人」で、かつ代表者になる本人です。登記のときに、証明書の原本を法務局に出します。
  • この軽減は、2026年10月時点では2027年3月31日までの措置です(租税特別措置法80条)。延長されるかは税制改正で決まるので、登記の前に確かめましょう。
  • 証明書には有効期限があり、優遇を約束するものでもありません。融資や補助金には、それぞれ審査があります。

東京に住みながら千葉の海の近くでカフェを開くなら、お店を開く市町村の創業塾を受けておくと、登録免許税も含めて使いやすくなります。

チェック

  • 開業する予定の区市町村に、特定創業支援等事業があるか確かめた
  • 日程と条件(創業の時期、全回出席など)を確かめた
  • 会社をつくるなら、証明書をもらってから登記する段取りにした

4. 一都三県の制度融資と、補助金の探し方

制度融資は、都県・金融機関・信用保証協会が力を合わせて行う融資です。信用保証協会は、事業者が金融機関から借りるときに「保証」をつけて借りやすくする公的機関です。保証料がかかり、返せなくなったときは協会が代わりに金融機関へ返し、事業者はあらためて協会に返していきます。

どの都県の制度も、その都県の中で事業をする人が対象です。東京に住んで千葉で開業するなら、千葉県の制度を見ましょう。2026年10月時点の創業向けの例は次のとおりです。

東京都:制度融資「創業」

  • 限度額3,500万円。返済期間は運転資金7年以内、設備資金10年以内(据置1年以内を含む)
  • 信用保証料の3分の2を都が補助(制度融資要項 2026年10月1日改定版)
  • 特定創業支援等事業の証明書などがあれば「創業支援特例」になり、利率が0.4%下がります。創業の6か月前から申し込めます
  • 39歳以下・55歳以上・女性の方には、信用金庫・信用組合の融資と専門家の助言を組み合わせた「女性・若者・シニア創業サポート2.0」もあります(限度額1,500万円以内、女性は2,000万円以内。固定金利1.25%以内)

神奈川県:創業支援融資

  • 限度額3,500万円。返済期間は1年超10年以内(据置1年以内を含む)、担保は不要
  • 利率は年2.2%以内、保証料率は0.40%
  • 融資の前後に創業支援機関(神奈川産業振興センター、商工会、商工会議所など)の経営指導を受けるか、特定創業支援等事業を使った方は「創業特例」で、利率2.0%以内・保証料なし

埼玉県:起業家育成資金

  • 開業前から開業後10年未満まで使えます。限度額3,500万円
  • 利率は年1.7〜2.2%以内(期間と使いみちで違います)。2026年10月から引き上げられました
  • 開業前に申し込むなら、融資から1か月以内(会社は2か月以内)に開業する計画が必要です。特定創業支援等事業を受けた方は、6か月以内に広がります
  • 受付は、事業所(予定地)の地区の商工会議所・商工会か「創業支援センター埼玉」

千葉県:創業資金(一般枠)

  • 限度額は設備資金3,500万円、運転資金2,500万円。返済期間は設備資金7年以内、運転資金5年以内(どちらも据置1年以内)
  • 利率は固定で、3年以下1.5%、5年以下1.7%、7年以下1.9%(令和8年度の融資のしおり)
  • 保証料のうち0.4%を県が補助します(手続きは不要)
  • 相談・申込みは、取扱金融機関、商工会議所・商工会など

区市町村が、利子や保証料の補助、証明書を条件にした独自の補助金を出していることもあります。条件は年度の途中でも変わるので、各都県の最新のページで確かめましょう。

都県の創業相談の窓口

  • 東京都:「東京都創業NET」に、相談施設(TOKYO創業ステーション)や区市町村の支援がまとまっています。
  • 神奈川県:神奈川産業振興センター、商工会、商工会議所などの創業支援機関
  • 埼玉県:「創業支援センター埼玉」(創業前〜創業5年未満。秩父など県内各地でも相談会)
  • 千葉県:「チャレンジ企業支援センター」に、事業計画書のたて方から相談できます(無料、夜も予約で可)。

補助金の探し方と、持続化補助金〈創業型〉

補助金は原則として返さなくてよいお金ですが、使ったあとに精算して払われる(後払い)もので、費用の一部しか出ません。立て替えるお金も、資金計画に入れておきましょう。探すときは、次のサイトが便利です。

  • J-Net21「支援情報ヘッドライン」(中小企業基盤整備機構):国や都道府県の補助金を、地域別に探せます。
  • ミラサポplus(中小企業庁):補助金の検索や、公募のスケジュール
  • jGrants:国などの補助金を、インターネットで申請するサイト

たとえば「小規模事業者持続化補助金〈創業型〉」の第4回は、次のような内容です。

  • 対象:特定創業支援等事業の支援を受けた日と開業日(会社なら設立日)が、どちらも締切から過去1年以内の小規模事業者など。第4回なら2025年12月15日〜2026年12月15日です。
  • 開業の時期:申請の時点で、開業届の開業日を過ぎていることが必要です。お店の準備中でもかまいませんが、補助事業が終わるまでに営業を始めます。
  • 補助:販路開拓などの費用(機械装置、広報費、ウェブサイト関連費など)の3分の2、上限200万円(インボイス特例なら50万円上乗せ)
  • 日程:申請は2026年11月5日〜12月15日17時。商工会・商工会議所の「事業支援計画書(様式4)」は12月4日までに発行を受けます。採択の発表は2027年3月ごろの予定です。
  • 注意:交付決定より前に発注・契約・支払いしたものは対象外です。申請に要る「GビズIDプライム」は、書類で申し込むと審査に最大1か月かかります。

次の回の予定は、第4回の締切のあとに案内されます。開業の時期で使える回が変わるので、公募要領で期間を確かめましょう。

チェック

  • 開業する都県の制度融資の、創業向けの資金を確かめた
  • 都県や区市町村の相談窓口に、一度相談した
  • 補助金は後払いと考えて、立て替えるお金も計画に入れた

5. 事業計画書の作り方:公庫の創業計画書と計算例

創業計画書に書くこと

公庫の「創業計画書」は1枚の書式で、面談の時間を短くするために使われます。自分で作った計画書を代わりに出してもよい、とされています。項目は10個あり、とくに次の5つは時間をかけて書きましょう。

  • 創業の動機:なぜ、この事業を始めるのか
  • 経営者の略歴等:勤め先の名前だけでなく、担当した仕事や身につけた技能まで。資格や許認可(営業の許可・届出)の状況も書きます
  • 取扱商品・サービス:客単価、営業日数、セールスポイント、販売ターゲットと集客の方法、競合など
  • 必要な資金と調達方法:1章の設備資金・運転資金と、その集め方。左右の合計を一致させます
  • 事業の見通し(月平均):創業当初と、軌道に乗った後の売上・原価・経費・利益と、その根拠

残りは、従業員、取引先、関連企業、お借入の状況(住宅や車も含む)、自由記述欄です。公庫のサイトでは、9業種の記入例、「創業計画書セルフチェックリスト」、月ごとの見通しを書く「月別収支計画書」もダウンロードできます。

売上は「根拠のある式」で出す

公庫の手引は、売上の予測には根拠が大切だとして、業種ごとの式を紹介しています。飲食店などは、次の式です。

売上 = 客単価 × 席数 × 回転数(1席に1日何人座るか)× 営業日数

原価率(売上に対する仕入れの割合)など業種ごとの目安は、公庫の「小企業の経営指標調査」で調べられます(飲食店・宿泊業などは2026年8月公表)。

たとえば、33歳でカウンター10席のバーを開く場合

ここからは、考え方を示すための仮の数字です。家賃や工事費は、場所や物件で大きく変わります。

まず、必要な資金と集め方です。

  • 設備資金:内装工事300万円、厨房機器・冷蔵庫など100万円、いす・照明・音響50万円、物件の保証金60万円で、合計510万円
  • 運転資金:最初の仕入れや、開店前後数か月分の家賃・広告費などで140万円
  • 集め方:自己資金150万円、公庫からの借入500万円で、合計650万円(自己資金の割合は約23%)

次に、軌道に乗ったあとの1か月の見通しです。

  • 売上:客単価3,500円 × 10席 × 1.0回転 × 月24日 = 84万円
  • 売上原価:原価率25%として21万円
  • 経費:家賃15万円、支払利息1.5万円、水道光熱費・広告費・消耗品などその他11.5万円で、合計28万円(一人で営む個人事業なら、自分の取り分は経費に入れません)
  • 利益:84万円 − 21万円 − 28万円 = 35万円

公庫の手引では、この利益から借入の元金を返し、個人事業ならさらに家計費(生活費)を出す、と説明しています。

  • 借入の元金の返済:500万円を7年(84回)で返すと、月に約6万円
  • 家計費:月22万円とすると
  • 手元に残るお金:35万円 − 6万円 − 22万円 = 約7万円

税金も、ここから払います。手元に残るお金が少ないときは、客単価や営業日数、家賃、借りる金額を見直してみましょう。

では、開店したばかりで回転数が0.6回の月はどうでしょう。売上は約50万円、原価は約13万円、経費28万円で、利益は約10万円です。元金と家計費を引くと、約18万円足りません。

だからこそ、黒字になるまでの数か月分を運転資金に入れておくと、あわてずに済みます。最初は据置期間をつけて元金を返さない形にすれば、足りない額は月約12万円まで小さくなります。

たとえば、31歳で週末だけキャンプ場を始める場合

キャンプ場も、同じ考え方で計算できます。10区画、1区画1泊5,000円、営業は土曜の夜だけで月4回、区画の埋まる割合(稼働率)を60%とします(仮の数字)。

  • 売上:5,000円 × 10区画 × 60% × 4回 = 月12万円
  • 経費:土地の借り賃3万円、トイレの清掃・水道・ごみの処理2万円、保険、予約サイトの手数料、支払利息など2万円で、合計7万円
  • 利益:12万円 − 7万円 = 月5万円

会社員を続けるなら家計費は給料から出せるので、この利益で借入を返せるかを見ます。たとえばトイレや炊事場に200万円を借りて5年(60回)で返すなら、元金は月約3.3万円で、手元に約1.7万円残ります。

季節で数字が大きく変わるので、月別収支計画書で1年分を並べてみましょう。土地を買うお金は、公庫の特別利率の対象外です(2章)。トイレや水まわりに必要な許可で設備の費用も変わるので、キャンプ場を開くのに必要な許可もあわせて確かめましょう。

父の店や、ほかの人の店・宿を引き継いで始める場合は、お金の考え方が少し変わります。事業を引き継いで始めるときもあわせて読んでみましょう。

チェック

  • 創業計画書の10項目を、下書きで一度うめてみた
  • 売上を「客単価×席数×回転数×営業日数」のような式で出した
  • 利益から返済と家計費を引いて、手元に残るお金を計算した
  • 開店直後の売上が少ない月も計算し、足りない分を運転資金に入れた

6. 確かめる順番と、相談先

おすすめの順番は、次のとおりです。

  • ① 事業と場所の候補を決め、設備資金・運転資金と、用意できる自己資金を書き出す
  • ② 開業する区市町村に創業塾など(特定創業支援等事業)があるか問い合わせ、受講の日程を組む(1か月以上かかります)
  • ③ 公庫の創業計画書の書式で、事業計画書の下書きをつくる
  • ④ 見積もりを2社以上からとり、家賃・保証金も確かめて金額を直す
  • ⑤ 公庫の創業サポートデスクや、開業する都県・区市町村の窓口に、計画書を持って相談する
  • ⑥ 補助金を使うなら、公募要領で対象の期間と締切を確かめ、交付決定までは発注しない
  • ⑦ 会社をつくるなら、証明書をもらってから登記する

主な相談先

  • 創業融資:日本政策金融公庫の支店(創業サポートデスク)、事業資金相談ダイヤル
  • 特定創業支援等事業・区市町村の補助:開業する区市町村の商工・産業の担当課
  • 都県の制度融資:取扱金融機関、商工会議所・商工会、各都県の制度融資の担当課
  • 創業の相談:4章の都県の相談窓口
  • 補助金の申請:その補助金の事務局と、地元の商工会・商工会議所
  • 会社の登記:法務局(書類づくりは司法書士)、税金の相談:税務署や税理士

お金の計画は、見積もりや物件が決まるたびに直していくものです。数字を直すうちに、不安は「こうすれば続けられる」という自信に変わっていきます。まずは紙1枚に、必要なお金を書き出すところから始めてみましょう。

最後に:必ず、自治体の担当課に確かめてください

許可や手続き、支援の制度は、同じ内容でも自治体によって判断や条件が違うことがあります。物件や計画が決まったら、その市区町村の担当課(建築指導課・都市計画課・保健所・消防署・警察署、移住や創業の支援の窓口など)に、住所や図面を持って直接確かめましょう。

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※この記事は、2026年10月時点の法令や自治体の公開情報をもとに、一般的な内容をまとめたものです。実際の手続きや可否の判断は、物件のある市区町村・保健所・警察署、または行政書士などの専門家に必ずご確認ください。この記事の内容によって生じた損害について、当社は責任を負いかねます。

出典・参考(41件)

開業費用・資金調達の実態(1章)

  • 日本政策金融公庫 総合研究所 ニュースリリース「2025年度新規開業実態調査」アンケート結果の概要(2025年12月5日、開業費用の平均975万円)https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/topics_251205.pdf
  • 日本政策金融公庫 総合研究所「2025年度新規開業実態調査」本文(調査対象、開業費用の中央値600万円・分布、資金調達額平均1,219万円、借入827万円・自己資金279万円)https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kaigyo_251205_1.pdf
  • 日本政策金融公庫「創業の手引」2026年5月版(設備資金・運転資金のチェックポイント、自己資金の割合、黒字化まで平均6.4か月、補助金は精算払い、売上の計算式、利益と手元に残るお金、創業サポートデスク152支店、不審な勧誘への注意)https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/pdf/sougyou_tebiki202605.pdf

日本政策金融公庫の創業融資(2章)

特定創業支援等事業(3章)

一都三県の制度融資・相談窓口(4章)

補助金の探し方(4章)

事業計画書(5章)