起業移住

古民家カフェを開業するには空き家をお店や宿にする前の確認リスト(千葉・内房)

公開日:2026.10.28

「この古い家で、小さなカフェを開けたらいいな」。木更津や君津、富津、袖ケ浦、市原など、海と山が近い内房エリアでは、そんな思いで家を探す方が増えています。

ただ、家を「住まい」から「お店」や「宿」に変えるときは、いくつかの決まりを確かめる必要があります。順番さえ押さえれば、こわいものではありません。このコラムでは、物件を買う・借りる前に確かめておきたいことを、チェックリストの形でまとめました。例は千葉・内房ですが、確かめる順番は一都三県のどこでも同じです。

この記事のポイント

  • 家をお店や宿にできるかは、まず「用途地域」と「市街化調整区域かどうか」で決まります。
  • お店や宿に使う部分が200㎡以下なら建物の確認申請はいりませんが、建物や消防の決まりは守る必要があります。
  • 保健所と消防署には、工事の前に図面を持って相談するのが近道です。

この記事は、2026年10月時点の法令や自治体の公開情報をもとに、一般的な内容をまとめたものです。実際の手続きや可否の判断は、物件のある市区町村・保健所・警察署、または行政書士などの専門家に必ずご確認ください。この記事の内容によって生じた損害について、当社は責任を負いかねます。

1. まず「その家がどこに建っているか」を調べる(用途地域)

まちには、都市計画(まちづくりのルール)で「この場所には、こんな建物を建ててよい」という区分が決められています。これを用途地域(ようとちいき)といいます。全部で13種類あり、住まい中心の静かな地域ほど、お店への制限が強くなります。

  • 第一種低層住居専用地域(低い家が並ぶ住宅地)では、お店だけの建物は原則として建てられません。ただし「店舗兼用住宅」なら認められる場合があります。条件は、延べ面積の半分以上が住まいで、お店などの部分が50㎡以下であること。対象は、喫茶店・食堂、日用品のお店、自家販売のパン屋やお菓子屋、アトリエ・工房(機械の出力に上限あり)などです。
  • 第二種低層住居専用地域では、喫茶店・食堂などのお店が、その部分150㎡以内・2階以下なら建てられます。
  • 第一種中高層住居専用地域では、お店・飲食店の部分が500㎡以内(2階以下)なら建てられます。
  • 旅館業の宿(ホテル・旅館)は、住居専用地域では原則として建てられません。
  • 用途地域は、市のホームページで調べられます。木更津市は地図サイト「きさNAVI」や都市計画図のPDF、君津市も都市計画図をインターネットで公開しています。ただし、正式な確認は窓口で行うよう案内されています。

チェック

  • 物件の住所で、用途地域を調べた
  • お店にする部分の広さ(㎡)を、だいたい把握した
  • 住まいとお店を兼ねるのか、お店だけにするのかを決めた

2. 「市街化調整区域」の家は、お店にできる?

内房エリアでは、駅や中心部から少し離れると市街化調整区域(まちを広げすぎないように、建物を建てることを抑える区域)になっていることがよくあります。たとえば君津市の公表では、都市計画区域のうち市街化調整区域は約3,184ha、市街化区域は約2,133haです。

この区域では、建物の使い方を変えるだけでも、原則として許可が必要です(都市計画法43条)。木更津市も、「専用住宅」として許可を受けた建物を店舗や事務所として使うことは違反になると注意をよびかけています。

一方で、道もあります。国は2016年12月、市街化調整区域の古民家などを宿泊施設や飲食店に変えて観光に生かす場合などに、許可の運用をやわらかくするよう自治体に助言しました。千葉県では、開発審査会(許可を審議する県の会議)の「提案基準42 地域再生のための用途変更等」がこれに当たります。

  • 対象の一つは「古民家」を店舗や宿泊施設などに変えるもの。古民家とは、たとえば築50年以上で、伝統的な木造の技術で建てられた建物などです。
  • もう一つは、空き家になった、法律に合って建てられた建物を変えるものです。
  • 主な条件は、市のまちづくりの方針や観光・地域振興の計画に合っていること、敷地を原則として広げないこと、決まった幅以上の道路に面していることなどです。
  • 広さの条件もあります。お店なら延べ面積が原則500㎡以下(県道などに面していれば1,000㎡以下)です。
  • 浸水が想定される区域の土地は、安全・避難の対策がない限り原則として含まないこと、という条件もあります。
  • 実際に、2024年7月の千葉県開発審査会では、成田市の「古民家再生店舗(飲食店)」が審議され、同意されています。

許可の窓口は市によって違います。木更津市・市原市・袖ケ浦市は市が許可を担当し、君津市・富津市は千葉県の君津土木事務所が担当しています。

チェック

  • 物件が市街化区域か、市街化調整区域かを確かめた
  • 調整区域なら、許可の窓口(市または県の土木事務所)に、計画を持って事前に相談した
  • 建物がいつ、どんな許可で建てられたか(建てた年、元の用途)を確かめた

3. 建物の「使い方の変更」:用途変更と200㎡

建築基準法では、飲食店、物販店(10㎡を超えるもの)、ホテル・旅館などを特殊建築物(人が多く集まるなど、安全の決まりが厳しい建物)としています。

  • 住宅を特殊建築物に変える部分が200㎡を超えると、確認申請(工事や変更の前に、法律に合っているか審査を受ける手続き)が必要です。2019年6月25日の改正で、100㎡から200㎡に引き上げられました。
  • 200㎡以下なら手続きは不要ですが、国土交通省は「建築基準法や消防法などに合わせることは、手続きの有無にかかわらず引き続き必要」としています。
  • 2025年4月からは、木造2階建てなどの家で、柱・壁・屋根・階段といった主な部分の半分を超えて直す大きなリフォームにも、確認申請が必要になりました。キッチン・トイレ・お風呂の入れ替えなどは対象外とされています。
  • 古い家では、完成したときの検査に合格した証明(検査済証)が見つからないこともあります。その場合の調べ方は、国土交通省がガイドラインで示しています。

チェック

  • お店や宿に使う部分の面積が200㎡を超えるかどうか確かめた
  • 大きなリフォームが要るかどうか、建築士に見てもらった
  • 確認済証・検査済証など、建物の書類があるかを売主・貸主に聞いた

4. 営業の許可・届出:カフェ・宿・工房で変わる

カフェ・飲食店の場合

  • 保健所の飲食店営業許可が必要です。木更津市・君津市・富津市・袖ケ浦市は、千葉県の君津保健所(君津健康福祉センター)が担当です。
  • 千葉県は「必ず建築・改修工事の着工前に相談を」と案内しています。設備の位置を書いた図面(手書きでもよい)と、今の様子がわかる写真を持っていきます。
  • お店には食品衛生責任者(お店の衛生を管理する人)を置きます。資格がなければ、養成講習会を受けます。
  • 井戸水を使う場合は、水質検査(申請時に直近1年以内の結果)が必要です。

宿の場合

  • 年間を通して営業するなら、旅館業法の許可(簡易宿所など)。簡易宿所は、客室の延べ床面積が33㎡以上(泊まる人を10人未満にするなら、3.3㎡×人数以上)などの基準があります。
  • 住宅のまま人を泊める民泊(住宅宿泊事業)は届出で、泊められるのは年180日までです。都道府県などは条例で、区域や期間をさらに制限できます。千葉県では、届出は原則インターネットで行います。
  • どちらも、窓口は保健所です。

消防のこと

  • 建物をお店などとして使い始めるときは、消防署への「防火対象物使用開始届」が必要です。木更津市は、消防本部予防課のページに様式があります。
  • 2019年10月から、火を使う設備がある飲食店は、広さにかかわらず原則として消火器の設置が必要です。
  • 民泊では、消防署の「消防法令適合通知書」を届出のときに求められます。家主が住んでいて、宿泊室が50㎡以下なら一般の住宅として扱われますが、それ以外は旅館と同じような火災報知設備などが必要になります。

チェック

  • 工事の前に、図面と写真を持って保健所に相談した
  • 宿なら、旅館業と民泊のどちらにするか決めた
  • 消防署に、必要な設備と届出を確かめた

5. 建物と土地のこと、借りる場合の約束

  • 道路:建物の敷地は、原則として幅4m以上の道路に2m以上接していなければなりません。満たしていない家は、建て替えができないことがあります(いわゆる「再建築不可」)。また、お店や宿など人が集まる建物には、県や市の条例で道路への接し方がより厳しく決められていることがあり、使い方を変えるときにも当てはまります。
  • 水まわり・排水:下水道がない地域では浄化槽を使います。使い方が変わると、浄化槽に必要な大きさの考え方も変わることがあるので、今の浄化槽で足りるか確かめましょう。
  • 農地:敷地に田や畑が含まれていたら、宅地として使うには農地転用(農地をほかの用途に変える手続き)が必要です。市街化区域の外では許可が必要で、木更津市では農業委員会が窓口です。農業振興のための「農用地区域」の農地は、原則として転用できません。
  • 耐震:1981年(昭和56年)5月31日以前に工事を始めた建物は、古い耐震基準で建てられています。国土交通省は、まず耐震診断で状態を知ることを勧めています。

チェック

  • 前の道の幅と、敷地が道に接する長さを確かめた
  • 下水道か浄化槽か、浄化槽ならその大きさを確かめた
  • 登記の地目(土地の種類)に、田・畑がないか確かめた
  • 建てた年を確かめ、古ければ耐震診断を考えた

借りてお店にするなら

  • 契約書の「使用目的」に、お店や宿として使うことをきちんと書いてもらいましょう。
  • 改装工事、看板、営業時間、においや音のことも、先に大家さんと話しておくと安心です。
  • 許可の申請で、建物の持ち主の書類や協力が必要になることがあります。
  • 退去するときは、借りた後にできた傷みを元に戻す原状回復が民法で決まっています(ふつうに使った傷みや古くなった分は除きます)。お店の工事をどこまで元に戻すのか、契約の前に決めておきましょう。

チェック

  • 店・宿として使ってよいと、大家さんの了解を書面でもらった
  • 工事の範囲と、退去時の戻し方を決めた

6. 確かめる順番と、相談先

おすすめの順番は、次のとおりです。

  • ① 住所から、用途地域と市街化調整区域かどうかを調べる
  • ② 調整区域なら、許可の窓口に事前相談する
  • ③ 道路・農地・浸水の心配がないかを確かめる
  • ④ 建築士と一緒に、面積・建物の書類・傷み具合を見る
  • ⑤ 保健所・消防署に、図面を持って相談する
  • ⑥ 借りるなら、大家さんと使い方・工事・退去時のことを決める
  • ⑦ ここまで確かめてから、買う・借りる契約をする

主な相談先

  • 用途地域・市街化調整区域:木更津市は都市政策課、君津市は建設計画課(許可は君津土木事務所)
  • 建物の決まり:市の建築の担当課(木更津市は建築指導課、君津市は建築課など)、建築士
  • 飲食店・宿の許可:君津保健所(木更津・君津・富津・袖ケ浦)。ほかの市は、それぞれを担当する保健所
  • 消防:物件の地域の消防本部・消防署
  • 農地:市の農業委員会

順番どおりに確かめれば、「この家でお店を開く」は、ぐっと現実に近づきます。スナックやバーにしたい場合はスナックを開ける場所の調べ方、コンテナを使いたい場合はコンテナハウスの建築確認、畑付きの家なら畑付き古民家を買う前にもあわせて読んでみてください。

最後に:必ず、自治体の担当課に確かめてください

許可や手続き、支援の制度は、同じ内容でも自治体によって判断や条件が違うことがあります。物件や計画が決まったら、その市区町村の担当課(建築指導課・都市計画課・保健所・消防署・警察署、移住や創業の支援の窓口など)に、住所や図面を持って直接確かめましょう。

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※この記事は、2026年10月時点の法令や自治体の公開情報をもとに、一般的な内容をまとめたものです。実際の手続きや可否の判断は、物件のある市区町村・保健所・警察署、または行政書士などの専門家に必ずご確認ください。この記事の内容によって生じた損害について、当社は責任を負いかねます。

出典・参考(38件)

用途地域(1章)

市街化調整区域(2章)

用途変更・確認申請(3章)

営業の許可・届出(4章)

建物と土地(5章)

借りる場合(5章後半)