起業

親の店や後継ぎのいない宿、どう継ぐ?事業承継の手続きと後継者人材バンク・補助金

公開日:2026.10.30

「父が続けてきた店を、自分の代でも続けたい」「後継ぎのいないお店や宿を引き継いで、会社員から独立したい」。ゼロからお店をつくるのではなく、今ある事業を受け継いで始める方法があります。日本政策金融公庫は、この形の創業を「継ぐスタ」と呼んで応援しています。

引き継ぐ開業では、お客さん、設備、仕入れ先、地域での名前をまとめて受け継げます。その分、お金・契約・建物・許可について、契約の前に確かめておくことがあります。このコラムでは、一都三県の公的な相談先、譲り受ける前のチェックポイント、融資と補助金を、2026年10月時点の公式の情報で順番にまとめました。

この記事のポイント

  • 相手探しは、国が各都県に置く「事業承継・引継ぎ支援センター」(相談無料)と、日本政策金融公庫の無料のマッチングから始められます。経営の経験がない人には「後継者人材バンク」があります。
  • 個人のお店を継ぐとき、借入・契約・許可は原則として自動では移りません。飲食店や宿の許可は届出や事前の承認で引き継げますが、スナックなど接待をするお店の許可は、譲り受けでは引き継げません。
  • お金は日本政策金融公庫の「事業承継・集約・活性化支援資金」に相談できます。国の「事業承継・M&A補助金」は枠ごとに条件が細かく、契約や発注は交付決定の後です。

この記事は、2026年10月時点の法令や自治体の公開情報をもとに、一般的な内容をまとめたものです。実際の手続きや可否の判断は、物件のある市区町村・保健所・警察署、または行政書士などの専門家に必ずご確認ください。この記事の内容によって生じた損害について、当社は責任を負いかねます。

1. 事業承継で開業する3つの形(親族内・従業員・第三者)

事業承継(じぎょうしょうけい:経営や事業を、次の人に引き継ぐこと)は、だれが継ぐかで3つに分かれます。

  • 親族内承継:子どもなど、家族や親族が継ぐ形。
  • 従業員承継:そのお店や会社で働いてきた人が継ぐ形。
  • 第三者承継:家族でも従業員でもない、外の人が継ぐ形。いわゆるM&A(会社や事業の譲り渡し・譲り受け)です。

中小企業庁の「事業承継ガイドライン」は、これまで中心だった親族内承継だけでなく、従業員承継や第三者承継も増えているとしています。会社員が「後継ぎのいないお店を継いで独立する」のは、3つ目の第三者承継です。

受け継ぐのは「人・資産・知的資産」

同じガイドラインは、引き継ぐものを、経営する立場(人)、お店や設備・お金(資産)、味や技術、常連さんや仕入れ先とのつながりといった目に見えない強み(知的資産)の3つに分けています。

契約の形は「事業譲渡」と「株式譲渡」

日本政策金融公庫は、外の人が事業を受け継いで創業する方法として、主に次の3つをあげています。

  1. 個人事業主として独立し、事業譲渡(お店の設備や在庫、取引などの事業の中身を、契約で一つずつ決めて譲り受けること)で引き継ぐ
  2. 自分が代表になる会社をつくり、その会社が事業譲渡で引き継ぐ
  3. 個人として株式譲渡(会社の株を買うこと)で、相手の会社の新しい代表になる

ガイドラインによると、個人事業主のお店を引き継ぐときは、事業譲渡を使うのがふつうです。会社になっているお店なら、株を買って会社ごと継ぐ3の方法もあります。株式譲渡では会社の契約や許可が原則そのまま残る一方、決算書に出ていない借金(未払いの残業代など)も一緒に引き継ぐ点に注意が必要です。

引き継ぐ開業のよいところと、難しいところ

日本政策金融公庫は、継ぐスタのよいところとして、次の2つをあげています。

  • 始めるときのお金を抑えられることがある:今あるお店や設備を受け継げば、新しい設備への投資を減らせる可能性があります。
  • 事業の強みを受け継げる:熟練の味、お客さんからの信頼、仕入れの取引先など、ゼロからでは時間がかかるものを引き継げます。

一方で、やりたいことがはっきりしているほど、ぴったりの事業は見つかりにくくなります。未経験の業種でも、数か月から数年、先代のもとで修業したり、先代に相談役になってもらったりして経験を補えると、公庫は紹介しています。親族内で継ぐ場合も、後継ぎに決まった人の約5割が「経営者になる準備に5年以上必要」と答えた調査をガイドラインが紹介しており、早めに話し始めるほど安心です。

個人で継ぐなら、税務署への届出も

個人のお店を継ぐときは、先代が廃業の届出を、継ぐ人が開業の届出を税務署に出します。どちらも「個人事業の開業・廃業等届出書」で、国税庁の案内では、2026年10月時点の提出時期は「事業を始めた(やめた)年の分の確定申告の期限まで」です。e-Taxのほか、書面で持っていく・送ることもできます。

青色申告(帳簿をつけることで税の優遇を受けられる申告のしかた)にしたいなら、その年の1月16日以後に始めた場合、始めた日から2か月以内に承認の申請を出します。親が亡くなって事業を相続した場合は、亡くなった時期に応じた別の期限があります。開業届と青色申告の申請を出した日は、国の補助金の条件(5章)で数えられることがあるので、控えを残しておきましょう。

チェック

  • 家族の店を継ぐのか、外の人の店を継ぐのかを決めた
  • 個人で継ぐか、会社をつくるか、会社の株を買うかを考えた
  • 先代のもとで学べる期間を考えた

2. 引き継ぐ相手の探し方:事業承継・引継ぎ支援センターと後継者人材バンク

事業承継・引継ぎ支援センター(相談無料)

事業承継・引継ぎ支援センターは、国が47都道府県に48か所置いている、事業承継の公的な相談窓口です。親族内の承継の計画づくりから、外の人への引き継ぎの相手探し、成約までを手伝います。東京都は、都内を受け持つセンターと、多摩地域のセンターの2か所です。

中小企業基盤整備機構(中小機構)の発表(2026年5月29日)では、2025年度に新しく相談した人は2万4,030者、第三者承継の成約は2,265件で、どちらも過去最多でした。

後継者人材バンクは、事業を引き継いで創業したい人と、後継ぎのいない事業主を引き合わせるしくみです。2025年度の成約は114件、創業を希望して新しく登録した人は1,472者(累計1万1,547者)でした。神奈川県と東京都のセンターは、従業員として雇われるための仕事の紹介ではなく、経営者の候補として引き合わせるものだと案内しています。

国のガイドラインでは、引き合わせの後の一定の期間、先代と一緒に経営してノウハウや顧客との顔つなぎを受け継ぐ形が紹介されています。

一都三県のセンター(2026年10月時点)

  • 東京都事業承継・引継ぎ支援センター(千代田区丸の内):東京商工会議所が国から委託を受けて運営し、23区を中心に、無料・完全予約制で相談を受けています。経営の経験がなく、創業の手段として譲り受けたい人は、まず連携する「日本政策金融公庫 東京ビジネスサポートプラザ」(新宿)で面談し、推薦を受けてからセンターに相談します。
  • 東京都多摩地域事業承継・引継ぎ支援センター(立川市):立川商工会議所が国(関東経済産業局)から委託を受けて運営しています。相談は無料・予約制です。
  • 神奈川県事業承継・引継ぎ支援センター(横浜市中区):公益財団法人神奈川産業振興センターが国から委託を受けて運営し、相談は無料です。後継者人材バンクは事前予約制で、面談に起業家用のヒアリングシートを持っていきます。
  • 埼玉県事業承継・引継ぎ支援センター(さいたま市浦和区、熊谷市にサテライトオフィス):さいたま商工会議所が国の委託を受けて設置しています。相談は無料・事前予約制です。2026年10月時点ではホームページが一時閉鎖中で、相談の申し込みは電話とメールで受け付けています。
  • 千葉県事業承継・引継ぎ支援センター(千葉市中央区):相談は無料・秘密厳守です。後継者人材バンクは、連携する創業支援機関(県内の商工会議所・商工会、木更津市などの市の窓口)を通して申し込む決まりで、センターへ直接は申し込めません。県内の商工会議所などでの出張相談会(完全予約制、原則1週間前までに申し込み)の日程は、センターのページで確かめられます。

相談は無料でも、外部の専門家の派遣などでは費用がかかることがあります(埼玉県の案内)。

日本政策金融公庫の「事業承継マッチング支援」

日本政策金融公庫(国民生活事業)も、「事業を譲り渡したい人」と「譲り受けたい人」をつなぐ無料のマッチングをしています。2026年3月末時点の登録は、譲り渡したい側6,649件、譲り受けたい側1万4,370件です。

  • 創業(継ぐスタ)用の申込フォームがあり、事業をしていない人は、運転免許証などの本人確認書類の写しを付けて申し込めます。紹介状はいりません。
  • 登録すると、希望をもとに公庫が相手の候補を探します。公庫のホームページの「後継者募集企業」から、自分で探すこともできます。
  • 相手のくわしい情報(決算書など)は、秘密保持契約(知った情報をほかにもらさない約束)を結んでから受け取るのが一般的です。
  • 交渉や契約は当事者どうしで行います。希望すれば弁護士会やセンターなどを通じて専門家を紹介してもらえますが、その費用は別にかかることがあります。

民間の仲介を使うなら「登録」を確かめる

民間のM&Aの仲介会社などを使う場合は、中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」に登録しているかを確かめましょう。登録している機関はデータベースで調べられ、手数料のおおよその計算ができる道具も公開されています。国の補助金や千葉県の助成金で仲介の費用を補助してもらう場合も、登録している機関を使うことが条件です。

チェック

  • 住んでいる都県、または開きたい地域のセンターに予約を入れた
  • 経営の経験がなければ、後継者人材バンクの申し込み窓口を確かめた
  • 日本政策金融公庫のマッチングにも登録するか考えた
  • 民間の仲介なら、登録と手数料のしくみを確かめた

3. 譲り受ける前に確かめること①:お金・借入・契約

候補が見つかったら、秘密保持契約を結んで、くわしい資料を見せてもらいます。専門家に頼んで相手の事業を調べることをデュー・ディリジェンス(DD)といい、お金や借金の調査(財務)や、株や契約の調査(法務)などがあります。小さなお店でも、次の点は自分の目で確かめておきましょう。

お金と借入のこと

  • 売上と利益:直近の決算書(個人のお店なら確定申告書)で、毎年どれくらい売れて、いくら残っているかを見ます。
  • 決算書に出ていない借金:未払いの給料や残業代、だれかの借金の保証人になっていないかなど、帳簿に表れないものも聞いておきます。
  • 個人のお店の借入:事業譲渡では、資産や借金、契約を一つずつ移します。借金を引き継ぐかどうかも契約で決め、借金の名義を継ぐ人に移すには、お金を貸している金融機関の同意などが必要です。
  • 会社を継ぐときの経営者保証:会社の借入を社長個人が保証していることがあります。「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」(2020年4月から適用)は金融機関に、原則として前の社長と後継者の両方からは保証を取らないこと、後継者への保証は慎重に判断することを求めています。
  • 値段:事業の中身や条件をもとに、双方が納得できる金額を話し合います。税理士や弁護士などの支援を受けるのが一般的です。

神奈川県のセンターも「個人保証の債務を引き継ぐ場合がある」と注意しています。保証人になるかは金融機関とよく話し合い、センターの経営者保証を外すための支援も使いましょう。

お店の名前(屋号)を残すとき

商法では、営業を譲り受けた人が前の人の商号(商売で使う名前)をそのまま使い続けると、前の人の営業で生じた借金も返す責任を負う、と決めています(会社どうしなら会社法22条)。お店の看板の名前(屋号)がこれに当たるかどうかは、使い方によって判断が分かれることがあります。

この責任は、譲り受けた後すぐに「前の人の借金は返さない」と登記するか、譲った人と譲り受けた人の両方から取引先などに知らせれば負いません(知らせた相手に対してだけです)。親の店の名前を残すときも、どの方法をとるか、契約の前に弁護士や司法書士と決めておきましょう。

契約と、働く人のこと

  • 取引やリースの契約:仕入れ先との取引、機械のリース、各種サービスの契約などは、民法では、契約の相手が承諾したときに、その契約上の立場が移るとされています。どの契約を引き継げるか、一つずつ相手に確かめます。
  • 働いている人:民法では、雇う側の立場を別の人に移すには、働く人の承諾が必要です。今のスタッフに残ってもらいたいなら、本人の意向を聞き、同意を得て雇う契約を切り替えます。
  • 先代のかかわり方:修業の期間や相談役など、先代にどう手伝ってもらうかを、契約のときに決めておくと安心です。

確かめるポイントをもっと細かく知りたい場合は、姉妹サイトのコラム事業を譲り受ける前に確かめたいこと(ハコツギ)も参考になります。

チェック

  • 秘密保持契約を結んでから、決算書や確定申告書を見せてもらった
  • 借入と保証人、決算書に出ていない借金がないかを確かめた
  • どの借金・契約を引き継ぐかを、譲渡の契約に書いた
  • お店の名前を使い続けるかどうかと、その手順を専門家と決めた
  • スタッフに残ってもらえるか、本人の意向を確かめた

4. 譲り受ける前に確かめること②:建物と営業許可の承継

建物のこと

まず、お店の建物が先代の持ち物か、借りているものかを確かめます。

  • 借りている場合:民法では、借りている人は、大家さんの承諾がなければ、借りる権利を譲ったり、又貸ししたりできません。承諾なしに使わせると、契約を解除されることがあります。名義を変えるのか、新しく借り直すのかを、大家さんと早めに話しましょう。
  • 先代の持ち物の場合:買うのか、借りるのかを決めます。家族の店なら、相続や贈与のときの税金も関係するので、税理士に相談しておくと安心です。
  • 内装や設備:前のお店の内装や厨房機器を買い取って使うのは、居抜き(いぬき)と同じ考え方です。リース品などの扱いは居抜き物件でお店を始めるときの注意点にまとめています。

なお、国の補助金の公募要領では、空き家や賃貸物件だけの売り買いは事業の引き継ぎに当たらないとされています。お客さんや取引、技術などの「事業」を受け継ぐのが事業承継です。

許可は「自動では移らない」が基本

国のガイドラインは、事業譲渡では前の人の許可は当然には引き継がれず、法律に定めがあるときに限って引き継げる、と説明しています。会社の株を買って継ぐ場合は許可が会社に残るのが原則で、代表者が変わった届出などが中心になります(東京都の飲食店の許可では、変わった日から10日以内)。

飲食店の営業許可(保健所)

  • 食品衛生法では、許可を受けた人が営業を譲り渡したときや、相続・合併・分割のときに、引き継いだ人が許可を受けた人の立場を受け継げます(地位の承継)。
  • 譲り渡しによる承継は、2023年(令和5年)12月13日以降の譲渡が対象で、営業の全部を譲る場合に限られます。
  • 引き継いだ人は、すぐに、譲渡契約書の写しなどを付けて保健所に「地位承継届」を出します。譲渡の予定があるときは、前もって保健所に相談するよう東京都や文京区は案内しています。
  • 届出の後、保健所が立ち入って衛生管理の状況を確かめます。千葉県では原則として承継の日から6か月以内で、許可の情報がシステムに登録されていれば、届出はオンラインでもできます。
  • お店を別の場所へ移す場合は、承継ではなく新しい許可が必要です。

宿の許可(旅館業)

  • 旅館業法では、宿を譲り渡すとき、譲り渡す人と譲り受ける人があらかじめ承認を受ければ、譲り受けた人が営業者の立場を受け継げます。
  • 承認の申請は二人の連名で出します。譲り渡した後に申請すると新しい許可の手続きが必要になると、板橋区は案内しています。
  • 手数料や日数は自治体で違います。たとえば東京都の保健所の手引きでは承継承認申請の手数料は9,700円、千葉県の保健所(政令市・中核市の保健所を除く)では標準処理期間が土日・祝日を除いて20日です(2026年10月時点)。
  • 先代が亡くなって相続で継ぐ場合は、亡くなってから60日以内に承認の申請をします(東京都・板橋区の案内)。

たとえば54歳で、古民家の宿を引き継いで二拠点で営みたい場合、千葉県の例なら申請から承認までカレンダーでおよそ1か月です。譲渡の日が承認の後になるよう、契約の前に保健所で段取りを確かめましょう。

スナックなど、接待をするお店の許可(警察)

  • 風営法の許可を受けた人の立場を引き継げるのは、相続(亡くなってから60日以内に申請して承認を受ける)と、会社の合併・分割の場合です。譲り受けで引き継ぐしくみはないので、継ぐ人が新しく許可を取ります。くわしくはスナックとバーの手続きの違いをご覧ください。

理容所・美容所やクリーニング所なども、2023年12月から譲り渡しで引き継げるようになりました(厚生労働省)。手続きは制度ごとに違うので、業種を変える場合も含め、契約の前にそれぞれの窓口に確かめましょう。

たとえば:父の個人の飲食店を継ぐときの順番

たとえば33歳で、父が個人で営む飲食店を2027年4月1日に継ぐ場合は、次の順番です(2026年10月時点の決まりでの例)。

  1. 譲渡の前:父と一緒に、店のある地域の保健所に「譲り渡しで許可を引き継ぎたい」と相談する
  2. 4月1日:父から自分へ、営業の全部を譲る契約を結ぶ(契約書の写しは届出に使う)
  3. 譲渡の後すぐ:自分が保健所に地位承継届を出す
  4. 4月1日から2か月以内:自分が税務署に青色申告の承認申請を出す
  5. 2028年3月15日まで:父の廃業届と自分の開業届を出す(2027年分の確定申告の期限。早めに出すほど安心です)

店の名前を残すなら、3章の手続きも譲渡の後すぐに済ませます。

チェック

  • 建物が先代の持ち物か、借りているものかを確かめた
  • 借りているなら、大家さんの承諾が得られるか確かめた
  • 今の許可・届出の種類と名義を一覧にした
  • 保健所や警察署に、引き継げるか、日数と手数料を確かめた
  • 宿なら、譲渡の前に承認を受ける段取りにした

5. 事業承継の融資と補助金(2026年10月時点)

日本政策金融公庫の融資

事業を引き継ぐときの融資として、日本政策金融公庫(国民生活事業)に「事業承継・集約・活性化支援資金」があります。

  • 使える人:事業の承継・集約を行う人と、承継・集約される人など
  • 使いみち:事業を引き継ぐために必要な設備資金と運転資金
  • 限度額:ほかの融資とは別枠で7,200万円
  • 返す期間:設備資金は20年以内(うち元金を返さない据置期間5年以内)、運転資金は10年以内(同5年以内)
  • 利率・担保:使いみちや返す期間、担保の有無で利率が変わります。担保や保証人は相談して決めます。

公庫が2019〜2022年度の第三者承継向けの融資1,685件を分析したところ、500万円以下が約6〜7割と小口が多く、個人企業への融資が7割でした。例として、広告代理店で働く人が、通っていた雑貨店の閉店を知って引き継ぎを申し出て、営業権や設備、在庫の買い取り資金に600万円を借りたケースが紹介されています。

借りる額を決めるための事業計画と資金計画の書き方は、開業資金と事業計画書のつくり方で紹介しています。

国の「事業承継・M&A補助金」

中小企業庁の「事業承継・M&A補助金」は、2026年10月時点で16次公募の申請を受け付けています(2026年10月2日〜11月6日17時、締め切り厳守)。申請は「Jグランツ」だけで、GビズIDプライム(事業者向けの共通ログイン)が必要です。IDの発行には1〜3週間ほどかかるので、早めに準備しましょう。

事業承継促進枠は、親族内承継や従業員承継をきっかけにした設備投資などを支援する枠です。外の人(第三者)が継ぐ場合は、この枠の対象になりません。

  • 個人のお店の場合、先代が開業届と青色申告の承認申請を出してから5年以上たっていること、継ぐ人が先代の親族(そのお店の代表になったことがない人)か、3年以上そこで働いてきた人であることが条件です。
  • 継ぐ人がまだ開業していないこともあるため、個人のお店は先代と継ぐ人の共同申請が必須です。
  • 公募の締め切りから5年以内(2031年11月5日まで)に承継を終えること、5年間で付加価値額(営業利益・人件費・減価償却費の合計)かその1人あたりの額が年3%伸びる計画をつくること、認定経営革新等支援機関(国が認めた支援機関)の確認を受けることも必要です。
  • 補助の上限は800万円(一定の賃上げをすると1,000万円)、下限は100万円です。補助率は2分の1以内で、小規模事業者(商業・サービス業は従業員5人以下、宿泊業・娯楽業は20人以下など)は3分の2以内です(800万円を超える部分は2分の1以内)。
  • 先代に払う譲り受けの費用(土地や資産の購入費など)は対象外です。スナックなど風営法の営業にあたる事業も対象外です。

たとえば、条件を満たす父の飲食店(小規模事業者にあたる場合)を継ぐ前に、厨房の設備を入れ替える費用が900万円なら、補助は3分の2の最大600万円で、残りの300万円は自分たちで用意します。補助金はお金を払い終えた後に受け取る「後払い」なので、いったん全額を立て替える資金の計画も必要です。

仲介やDDの費用を補助する専門家活用枠(買い手支援類型)は、個人事業主なら開業届と青色申告の承認申請から5年以上、会社なら3期分の決算が済んでいることが条件で、これから開業する人は対象外です。譲り渡す側(先代)向けの「売り手支援類型」もあります。

どちらの枠も、補助の対象になる契約や発注は交付決定の後に行います。お金を受け取って申請書を代わりにつくれるのは行政書士だけで、ほかの人がつくったと分かると交付決定が取り消されることがあると、公募要領は注意しています。

都県の助成の例

  • 東京都:「事業承継支援助成金」(令和8年度)は、親族内・従業員承継(Bタイプ)や、事業を譲り受ける側の事業者(Dタイプ)などの経費を、3分の2以内・200万円まで助成します。第3回の書類の提出期間は2026年10月13日〜12月15日17時です。申請の条件は、公益財団法人東京都中小企業振興公社のページで確かめましょう。
  • 千葉県:「事業承継支援助成金」(令和8年度、公益財団法人千葉県産業振興センター)は、承継の計画づくりや企業価値の算定、後継者を育てる講座、登録業者によるM&Aの仲介の費用の2分の1以内を、50万円まで助成します。県内に事業所があり支援機関の推薦を受けることなどが条件で、M&Aで買う側の企業は対象外です(予算がなくなるまで随時受付)。

チェック

  • 譲り受けの代金、改装、当面の運転資金を合わせた資金の計画をつくった
  • 日本政策金融公庫に、融資の相談をした
  • 補助金・助成金の条件と締め切りを確かめ、交付決定の前に契約しない段取りにした

6. 確かめる順番と、相談先

おすすめの順番は、次のとおりです。

  • ① 家族の店か外の店か、個人で継ぐか会社で継ぐかを決める
  • ② 事業承継・引継ぎ支援センター(経営の経験がなければ創業支援機関)と、日本政策金融公庫に相談・登録する
  • ③ 秘密保持契約を結び、売上、借入と保証、契約、スタッフ、お店の名前を専門家と確かめる
  • ④ 建物の持ち主・大家さんと、使い続ける条件を決める
  • ⑤ 保健所・警察署などで、許可を引き継げるか、新しく取るか、日数はどれくらいかを確かめる
  • ⑥ 資金の計画をつくって融資を相談する。補助金を使うなら、交付決定を待ってから契約・発注する
  • ⑦ 譲渡の契約を結び、許可の承継の手続きと開業届・青色申告の申請を出して、先代との引き継ぎ期間を始める

主な相談先

  • 相手探し・承継の進め方:東京都、東京都多摩地域、神奈川県、埼玉県、千葉県の各事業承継・引継ぎ支援センター(相談無料)
  • 後継者人材バンク:各センター、または連携する創業支援機関(東京都は日本政策金融公庫 東京ビジネスサポートプラザ、千葉県は県内の商工会議所・商工会・市の窓口など)
  • マッチングと融資:日本政策金融公庫(国民生活事業)の各支店
  • 補助金・助成金:事業承継・M&A補助金の事務局、東京都と千葉県の助成金の窓口(5章)
  • 許可の承継:飲食店・宿はお店のある地域の保健所、スナックなどは警察署の生活安全課
  • 開業届・青色申告:住所地などを受け持つ税務署
  • 契約・値段・税金・許可の書類:弁護士、税理士、司法書士、行政書士など

事業を引き継ぐ開業は、確かめることが多く見えるかもしれません。でも、受け継いだお客さんや技術、先代の助言は、ゼロから始めるときにはない大きな支えになります。まずは近くのセンターや公庫に「話を聞きたい」と連絡するところから始めてみましょう。

最後に:必ず、自治体の担当課に確かめてください

許可や手続き、支援の制度は、同じ内容でも自治体によって判断や条件が違うことがあります。物件や計画が決まったら、その市区町村の担当課(建築指導課・都市計画課・保健所・消防署・警察署、移住や創業の支援の窓口など)に、住所や図面を持って直接確かめましょう。

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※この記事は、2026年10月時点の法令や自治体の公開情報をもとに、一般的な内容をまとめたものです。実際の手続きや可否の判断は、物件のある市区町村・保健所・警察署、または行政書士などの専門家に必ずご確認ください。この記事の内容によって生じた損害について、当社は責任を負いかねます。

出典・参考(42件)

承継の形・個人で継ぐときの届出(1章)

相談先・後継者人材バンク・マッチング(2章)

  • 中小機構 事業承継・引継ぎポータル 事業承継・引継ぎ支援センター(国が設置する公的相談窓口、都道府県別センター一覧・所在地)https://shoukei.smrj.go.jp/center/
  • J-Net21(中小機構)令和7年度の事業承継・引継ぎ支援センターの新規相談者数とM&A成約件数が過去最多(2026年5月29日、47都道府県に48カ所、新規相談者2万4030者、第三者承継成約2265件、後継者人材バンク成約114件・新規登録1472者・累計11547者)https://j-net21.smrj.go.jp/news/nskto6000001zltv.html
  • 東京都事業承継・引継ぎ支援センター(東京商工会議所が国から委託、23区を中心、相談無料)https://jigyo-hikitsugi.go.jp/
  • 東京都事業承継・引継ぎ支援センター 譲受をお考えの方(経営経験がない人は東京ビジネスサポートプラザで面談・推薦、雇用のあっせんではない、完全予約制)https://jigyo-hikitsugi.go.jp/find_seller/
  • 東京都多摩地域事業承継・引継ぎ支援センター(立川商工会議所が関東経済産業局から委託、予約制・無料)https://tama-hikitsugi.jp/
  • 神奈川県事業承継・引継ぎ支援センター センターの紹介(公益財団法人神奈川産業振興センターが受託、相談無料、所在地)https://kanagawa-shoukei.go.jp/cener_invitation/
  • 神奈川県事業承継・引継ぎ支援センター 後継者人材バンク(雇用あっせんではない、登録申込書は事前予約制、ヒアリングシートは面談時に持参、個人保証債務の引継ぎが必要となる場合がある)https://kanagawa-shoukei.go.jp/koukeisya_bank/
  • 埼玉県 埼玉県事業承継・引継ぎ支援センター(さいたま商工会議所が国の委託で設置、相談無料・事前予約制、本所と熊谷サテライトオフィス、経営者保証解除に向けた支援、専門家派遣は費用負担の場合あり)https://www.pref.saitama.lg.jp/a0805/hikitugisiennsennta-.html
  • 埼玉県事業承継・引継ぎ支援センター Webサイトの一時閉鎖について(相談は電話・メールで受付)https://www.3192shoukei.jp/
  • 千葉県事業承継・引継ぎ支援センター 後継者人材バンク(創業支援機関経由で申込み・直接は不可、連携創業支援機関の一覧)https://chiba-jigyohikitsugi.go.jp/bank/
  • 千葉県事業承継・引継ぎ支援センター 相談会スケジュール(出張相談会、完全予約制、原則1週間前までに申込み)https://chiba-jigyohikitsugi.go.jp/schedule/
  • 日本政策金融公庫 事業承継マッチング支援 申込登録(無料、譲渡登録6,649件・譲受登録14,370件〔令和8年3月末〕、継ぐスタ用フォーム・紹介状不要、本人確認書類、後継者募集企業、秘密保持契約、専門家の紹介)https://www.jfc.go.jp/n/finance/jigyosyokei/matching/entry/
  • M&A支援機関登録制度(登録支援機関データベース、手数料の簡易計算)https://ma-shienkikan.go.jp/

お金・借入・契約(3章)

建物と許可(4章)

融資と補助(5章)